断絶覚え書き

書いたり書かなかったり

霊感マッサージ

ここ何年か、年末には必ずイベントが起こる。

一昨年は祖母が亡くなり、去年は僕が倒れた。今年は霊感マッサージを受けることになった。

 

経緯を話すと長くなるので割愛するけど、僕はなぜか「『気』の力で体のあんなことこんなこと治しちゃう」おじさんから霊感マッサージを受けることになった。

 

 

彼は本業は別にあり、半分ボランティアの形で霊感マッサージをしているのだという。小一時間彼は自分の実績を語り、僕から感じる異常を説明し、それをマッサージによって治してくれるそうだ。

 

この時点で僕は「うわ!なんて面白い玩具が来たんだ!」と大興奮。鼻息を荒くして彼の話に聞き入っていた。そもそも僕はドトールの喫煙席なんかで聞くマルチの勧誘が大好物。好きで好きでたまらない。なぜ僕を勧誘しないのか。こんなに楽しく話を聞くやついないのに。と常々思っているし、今も勧誘受付中です。

興奮しておじさんの話を聞いていると彼も火がついたように色々とパフォーマンスをし始める。周りの霊気が〜だとか僕にはよくわからないことをたくさん身振り手振りで教えてくれる。楽しくてたまらない。彼は調子が出てきたのか「ちょっとまって。向こうの方角からちょっと悪い気が流れてきている。」と言い、手のひらで壁を作るような動きを始めた。少し唸ったあと「一応、今『火』の気で壁を作ったから。」とご満悦。

 

手で壁を作りながら唸るおじさん。目を爛々とさせその異様な絵を見る僕。どっちもどっちだ。

 

ひとしきり話終えた彼は「よし、そろそろ始めるか。」と僕をを床にうつ伏せに寝かせる。僕は姿勢がすこぶる悪いので背中が背虫男のように盛り上がっている。背筋と腹筋のバランスがぶっ壊れてるんです。

そのガチガチになった背中に彼は手を置き温め、時折指で優しく押す。

あのね、めちゃめちゃ気持ちいい。すごい、たった15分くらいのマッサージだけど寝ちゃった。すごい。

で、施術が終わると背中のコリが消えてる。これは嘘でもなんでもなくて、本当に。実は去年倒れた時に背中の筋を痛めたのか全然体が回らなかったんだけどグルングルン回るの。これはどこの整体に通っても「なんで痛いのかわかりません。」と言われるばかりだったのに。

「えっ!すごい!!!えっ!?!?!?」の反応に嬉しそうに僕の体に置きていた異常のタネを説明してくれた。「気の巡りが〜」とか言ってたけど正直全く聞いてなかった。ただとにかく指圧がうまかった。びっくりするくらい。とんでもなく指圧のうまいおっさんだった。もはや気がどうとかどうでもいいくらい指圧がうまかった。

僕がすごいすごい。と一通りはしゃぎ終えると彼は帰っていった。

 

さて、僕は僕で彼が帰った後に少し考えた。彼は結局何者だったのかを。

結論としては「指圧のものすごく上手なおっさん」だと思う。多分だけど、彼は先天的に、ないし彼の生きてきた50年で得た経験の中で人体の構造を感覚的に理解したんだと思う。ここを押すとこうなる。ここの筋肉がここを動かしている。ここにはこの血管が流れている。そんなことを言語を通さずに理解したんだろうと思う。その結果、よくわからないけれど死ぬほど指圧の上手なおっさんが出来上がったんだと考えた。

でね、僕としては気だろうが技術の結果だろうがどっちでもいいんだなって。僕は体が楽になればいいし、方法はなんでもいいんだよね。今回の話も限りなく後付けで色々考えたけど、もしかしたら本当にスピリチュアルな話かもしれない。本当に僕の体には悪い気が溜まっていてそれを彼の力で取り除くことによって瞬間的によくなったのかもしれない。けど、理由なんてどうでもいいんだなって。

 

 

「科学的じゃないことは信じない。」って話。すげぇバカな話だなぁと思う。現代の科学で証明できないことってまだまだたくさんある。いわゆる霊的な現象も現状科学で説明できてないだけで今後説明がつく日がくるかもしれない。今わかってないこと以外は信じないというのはひどく科学的な考え方ではないと思う。本当に科学を信奉するのであればあるほど、「非科学的」な説明のできない事象を受け入れやすいと僕は思う。ただまぁ、みんなが科学者ではないので身近な言語や価値観で現象に理由をつけていった結果が土着宗教であったり、スピリチュアルな話なんじゃないかな。そんな考えが昔からあるので実は今回のおじさんも割と受け入れ態勢はできていた。彼の理屈は全然ピンと来ないけど、まぁなんかそういう世界があってもおかしくないのかな。そういうことが起こってもおかしくはないのかな。そんな風に聞いていた。

 

 

なんにせよ年末に背中の痛みが消えたのはとっても楽でした。おじさんありがと。